【ルック】HUMMEL 00 2026年春夏コレクション──“Human Anatomy”が映し出す、身体と精神の境界線

2025.09.09
Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 S/Sの2日目、スターライズタワー スタジオアースにて発表されたのは、デンマークスポーツブランドの新ライン「HUMMEL 00ヒュンメル オー)」。森川マサノリがクリエイティブディレクターとして就任して2シーズン目となる今回は、従来のショー形式を超え、映像とウエアによるインスタレーションという手法を選びました。テーマは「Human Anatomy(人体構造)」。健康や爽やかさの象徴とされるスポーツウエアに、解剖学的な視点を重ねることで、身体が持つ神秘性やグロテスクさを大胆に浮かび上がらせました。

Photo by ©FASHION HEADLINE

人体構造を映し込む服
コレクションの象徴的なピースは、トラックジャケットパンツ。テープが関節を思わせるラインを描き、膝を曲げる動作はそのままデザインとして残されます。ロゴを前面に押し出さず、むしろ隠すことで、身体の“見えない部分”へ視線を誘導するアプローチも印象的でした。健康的でありながらも不気味さを帯びるこの造形は、スポーツウエアを「機能性」と「精神性」の両面から読み替える挑戦です。

Courtesy of HUMMEL

都市と体の交錯する映像表現
会場では、都会の真ん中で自由に踊る男性や、眼球・細胞・血液といったモチーフが映像に投影されました。それは一見無秩序でありながら、人体が秘める複雑さとエネルギーを象徴しています。空間中央には糸でぐるぐるに巻かれたミイラのようなトルソーが吊るされ、「幽体離脱」という身体と精神の分離を示唆する造形が観客を圧倒。スポーツブランドとしてのヒュンメルが“不可侵領域”に挑む姿勢を鮮烈に刻みつけました。

Courtesy of HUMMEL

新しいスポーツブランド像
HUMMEL 00が提示したのは、スポーツウエアを単なる競技や健康の象徴として終わらせないという意志です。森川氏は、人体そのものを一つのランドスケープとしてとらえ、服をその写し鏡にしました。動きと構造、身体性と精神性──相反する要素を抱え込むことで、HUMMEL 00は「見えない領域へ触れるファッション」として、新しいスポーツブランドの可能性を描き出しました。

Courtesy of HUMMEL
Courtesy of HUMMEL
Courtesy of HUMMEL



編集部
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