北ドイツの港湾都市、美しい水の都ハンブルク。かの偉大な作曲家ブラームスや、メンデルスゾーンの生誕地でもあり、若き日のビートルズが過ごした地。
エルベ川の河岸に広がるこの都市では、石だたみを歩き、どこへ行くにもいくつもの橋を渡った。3月の半ば、気温は10℃に満たず寒い日だったが、それでも運河沿いの美しさに何度も足を止めた。ハンブルク初の世界遺産、シュパイヒャーシュタット(Speicherstadt)の赤レンガ倉庫街は、19世紀当時の風景をとどめる時空を超えた世界だった。
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エルベ川の北岸に位置する再開発地区、ハーフェンシティの最西端にはひときわ目を惹く近代建築が建つ。かつて倉庫として使われていたというレンガ造りの施設の上に、波打つようにデザインされたガラスの構造物をのせた、高さ111メートル(26階建て)の近未来的な建築「エルプフィルハーモニー・ハンブルク(Elbphilharmonie Hamburg)」(通称エルフィー)。2017年1月にオープンし、いまやハンブルクのシンボル的コンサートホールである。
Elbphilharmonie © Michael Zapf
設計者は、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)。東京のプラダ青山店(2003年)や、ロンドンのテート・モダン(2000年)などを手掛けたことで知られるスイスの建築家ユニットだ。建物の最大の特徴は、ガラス張りのファサード。おおよそ1,000枚もの曲面窓で構成される外観は、空、太陽の光、街の色を反射させ運河の水面に共鳴する。屋上のダイナミックなフォルムは、音叉を想起させる。
Elbphilharmonie © Michael Zapf
地上1階のチケットエントランスから建物に入ると、真っ白なトンネル状のエスカレーターへと通じる。天井と壁の境界のない、終着点も見えない空間、82メートルもの長さを約4分、途中で何度も傾斜を変えてゆるやかに上昇していく。(某2001年モチーフのSF映画にこんなシーンあった! )
8階まで上りきると、コンサートホールのホワイエ(ロビー)に出る。このプラザと呼ばれる公共エリアでは、地上37メートルの高さからエルベ川とハーフェンシティ、旧市街などを360度一望できる。ここまでは無料の入場整理券「プラザチケット」で入場可。ちなみに、事前に公式ウェブサイトで希望日時を予約(2ユーロ)すれば確実だそう。この階には、レストランやカフェ、ショップと、ホテル「The Westin Hamburg」のロビーも同居する。
Plaza © Iwan Baan
この日はコンサートを観ることは叶わなかったけれど、プレス向けのガイドツアーへ参加し内部を見学させてもらったので、2ホールある内のメインであるグランドホールについてをミニレポート。(ガイドツアーは一般向けにも実施していてコンサートを観に行かずともホール階を見学することができる)
このコンサートホールの音響設計を任されたのは世界を代表するホールの1つ、サントリーホール(1986年)を手掛けた巨匠、豊田泰久氏。約2,000人を収容するグランドホールの形は、サントリーホールと同じくステージを客席が360度囲むワインヤード(ぶどう畑)型と呼ばれる設計で、その名の通り、全席が段々畑状にステージの方を向いている。アーチ型の天井、壁、通路は不規則な曲線を描き、かなり複雑な形状をしている。内装の表面を覆うのは、約1万枚の石膏の音響パネル。音はパネルから天井の真ん中から吊り下げられた大きな反射板を介して聴衆へ。まるでホール自体が楽器のようにどの席にも音が降り注ぐ仕組みになっているそうだ。
Grand Hall © Michael Zapf
Elbphilharmonie Hamburg / Grand Hall © Michael Zapf
エルプフィルハーモニーのウェブには、豊田泰久氏のこんな言葉が書かれている。「I know that I have done my job as an acoustician well when audiences no longer perceive the large distance to the music. 」。演奏者と聴衆に距離がなくなった時、それはもう素晴らしい体験なのだろうな、と今も思いを馳せている。
Google Mapsのストリートビューでグランドホール内へ潜入できた
2010年の計画だったにも関わらず度々延期となり、満を持してグランドオープンしたこの施設へ関わった日本人は豊田氏だけではない。エンプフィルハーモニーに納入されたスタインウェイ社の3台のピアノ。この選定を行ったのが、ピアニストの内田光子氏だそうだ。内田氏は、2017年1月のこのホールのこけら落とし公演でピアノリサイタルを開催した。
Grand Hall Foyer © Iwan Baan
Grand Hall Foyer © Iwan Baan
Grand Hall Foyer © Iwan Baan
特殊な設計やデザインは外観、コンサートホールにとどまらず、階段やホワイエにも及び、そこにいるだけで視覚的に楽しませてくれる。外から見た特異なガラス張りのファサードを、こんな風に内側から間近に見ることができるのだから。
最後に、こちらのムービー「Window Waltz」を紹介。“誰もが音楽の才能を持っている”ことを証明するために、エンプフィルハーモニーが作った一本のストーリー。ぜひ観てみてください♩
エルベ川の河岸に広がるこの都市では、石だたみを歩き、どこへ行くにもいくつもの橋を渡った。3月の半ば、気温は10℃に満たず寒い日だったが、それでも運河沿いの美しさに何度も足を止めた。ハンブルク初の世界遺産、シュパイヒャーシュタット(Speicherstadt)の赤レンガ倉庫街は、19世紀当時の風景をとどめる時空を超えた世界だった。
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エルベ川の北岸に位置する再開発地区、ハーフェンシティの最西端にはひときわ目を惹く近代建築が建つ。かつて倉庫として使われていたというレンガ造りの施設の上に、波打つようにデザインされたガラスの構造物をのせた、高さ111メートル(26階建て)の近未来的な建築「エルプフィルハーモニー・ハンブルク(Elbphilharmonie Hamburg)」(通称エルフィー)。2017年1月にオープンし、いまやハンブルクのシンボル的コンサートホールである。
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設計者は、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)。東京のプラダ青山店(2003年)や、ロンドンのテート・モダン(2000年)などを手掛けたことで知られるスイスの建築家ユニットだ。建物の最大の特徴は、ガラス張りのファサード。おおよそ1,000枚もの曲面窓で構成される外観は、空、太陽の光、街の色を反射させ運河の水面に共鳴する。屋上のダイナミックなフォルムは、音叉を想起させる。
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地上1階のチケットエントランスから建物に入ると、真っ白なトンネル状のエスカレーターへと通じる。天井と壁の境界のない、終着点も見えない空間、82メートルもの長さを約4分、途中で何度も傾斜を変えてゆるやかに上昇していく。(某2001年モチーフのSF映画にこんなシーンあった! )
8階まで上りきると、コンサートホールのホワイエ(ロビー)に出る。このプラザと呼ばれる公共エリアでは、地上37メートルの高さからエルベ川とハーフェンシティ、旧市街などを360度一望できる。ここまでは無料の入場整理券「プラザチケット」で入場可。ちなみに、事前に公式ウェブサイトで希望日時を予約(2ユーロ)すれば確実だそう。この階には、レストランやカフェ、ショップと、ホテル「The Westin Hamburg」のロビーも同居する。
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この日はコンサートを観ることは叶わなかったけれど、プレス向けのガイドツアーへ参加し内部を見学させてもらったので、2ホールある内のメインであるグランドホールについてをミニレポート。(ガイドツアーは一般向けにも実施していてコンサートを観に行かずともホール階を見学することができる)
このコンサートホールの音響設計を任されたのは世界を代表するホールの1つ、サントリーホール(1986年)を手掛けた巨匠、豊田泰久氏。約2,000人を収容するグランドホールの形は、サントリーホールと同じくステージを客席が360度囲むワインヤード(ぶどう畑)型と呼ばれる設計で、その名の通り、全席が段々畑状にステージの方を向いている。アーチ型の天井、壁、通路は不規則な曲線を描き、かなり複雑な形状をしている。内装の表面を覆うのは、約1万枚の石膏の音響パネル。音はパネルから天井の真ん中から吊り下げられた大きな反射板を介して聴衆へ。まるでホール自体が楽器のようにどの席にも音が降り注ぐ仕組みになっているそうだ。
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エルプフィルハーモニーのウェブには、豊田泰久氏のこんな言葉が書かれている。「I know that I have done my job as an acoustician well when audiences no longer perceive the large distance to the music. 」。演奏者と聴衆に距離がなくなった時、それはもう素晴らしい体験なのだろうな、と今も思いを馳せている。
Google Mapsのストリートビューでグランドホール内へ潜入できた
2010年の計画だったにも関わらず度々延期となり、満を持してグランドオープンしたこの施設へ関わった日本人は豊田氏だけではない。エンプフィルハーモニーに納入されたスタインウェイ社の3台のピアノ。この選定を行ったのが、ピアニストの内田光子氏だそうだ。内田氏は、2017年1月のこのホールのこけら落とし公演でピアノリサイタルを開催した。
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特殊な設計やデザインは外観、コンサートホールにとどまらず、階段やホワイエにも及び、そこにいるだけで視覚的に楽しませてくれる。外から見た特異なガラス張りのファサードを、こんな風に内側から間近に見ることができるのだから。
最後に、こちらのムービー「Window Waltz」を紹介。“誰もが音楽の才能を持っている”ことを証明するために、エンプフィルハーモニーが作った一本のストーリー。ぜひ観てみてください♩