【PRESSブログ】アートを引き出すクリエーティブなインタビューとは

2013.02.04

キュレーターのハンス・ウーリッヒ・オブリスト(Hans Ulrich Obrist)をご存知でしょうか。
オブリストは多くのアーティストへ膨大な量のインタビューを行っており、文章に起こすことでアーティスト達を浮き彫りにしています。オブリストのインタビューによって引き出された、表現し続ける作家達の言葉には、作品そのものと同様の、或いはそれを上回る強さを感じます。

アートにとって、作品のモノとしての強さや美しさを使って観客を「感じさせる」ことは大切です。しかし最も重要なのは、表現を言葉にすること、命名すること、現象化させることによって「表現とは何かについて考えさせる」ことです。

昨日まで行われていた東京都現代美術館の「MOTマニュアル2012」では、オブリストと建築家のレム・コールスハース(Rem Koolhaas)をゴーストライターがインタビューする、という内容のライアン・ガンダー(Ryan Gander)による映像作品が展示されていました。インタビュー内容は、オブリストが様々な作家達と行う「インタビュー」についてです。
そこではオブリストが執るインタビュー方法の一例として、アーティストの「未だ実現化されていないプロジェクト」に注目する方法があげられていました。実現化されていないものをアーティストと一緒に言葉で「かたち」にすることで、作品を超えた意味を持つインタビューになり、ゆくゆくはそれらの「かたち」が「作品」になっていくこともあるはずです。

そんなインタビューができるのであれば、してみたいものです。

10年ほど前、アーティストのアデル・アブスメッド(Adel Abdessemed)をインタビューしたことがあります。その際、「君の質問の意味がわからない!」とキレられ、「なんて嫌な奴!」とその後しばらく悶々とした覚えがあります。その後彼の作品は、悔しいことにますます素敵に発展して行きました。
先日、キュレーターのピエール・ルイジ・タッジ(Pier Luigi Tazzi)がアブスメッドをインタビューしているを読む機会が偶々あり、安易なインタビューを行った当時の自分を反省しました。2人の「対話」は意図しない方向へ何度も転びながら、アブスメッドのアートを見事に言葉によって「かたち」にしていました。

「考えさせること」がアートの重要な命題となった今、アーティストは職人であることに加え、敏腕プロデューサー、ディレクター、広告マン、哲学者でなければならない。1人で何役もこなすジェネラリストにならなければならない、という厳しくもエキサイティングな時代です。そしてインタビュアーも同様に、眠っている「かたち」を引き出す、同じほどクリエーティブな姿勢と真剣さを持っていないとだめなんですね。

会社では自社のデザイナー達へのインタビューの「対応」に追われる日々ですが、これらの優れたインタビューを読んでいて、また自分でインタビューがしたくなりました。
Maya Junqueira Shiboh
  • Front page of 'Hans Ulrich Obrist Conversations Volume 1' 2011 Manuella Editions.
  • Front page of 'Adel Abdessemed Conversation with Pier Luigi Tazzi' 2012 Actes Sud.
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