6月28日と29日の週末、大阪・うめきた公園の緑に囲まれた空間で、ミュウミュウ(Miu Miu)が開催した文学イベント「Summer Reads」が、多くの来場者に深い余韻を残して幕を閉じた。昨年に続く第2回目となる本イベントは、Miu Miuが取り組む芸術振興・文化体験の一環として、“言葉の力” を通して現代思想とコミュニティの関係を問い直す特別な試み。まるで都市の中に開かれた知的な避暑地のように、読書と思索のひとときが、そこには広がっていた。
Courtesy of Miu Miu
パリと東京、時代を超えて交差するふたりの女性の声
イベントでは、来場者に向けてMiu Miuオリジナルパッケージに包まれた書籍を1冊進呈。セレクトされたのは、フランスの哲学者・作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールの『離れがたき二人』と、日本の作家・戯曲家円地文子による『女坂』。いずれも、時代の制約や慣習に抗い、“女性であること”の輪郭を自らの言葉で描いたふたりの作家による傑作だ。
Courtesy of Miu Miu
『離れがたき二人』は、ボーヴォワールの実体験をもとにした少女同士の親密な友情と知性の目覚めを描く未発表作品。1929年、19歳で非常に難関な国家資格とされるアグレガシオン(一級教員資格)試験に最年少合格。同年に出会うジャン=ポール・サルトルと生涯の知的パートナーとなった彼女の思想は、後の『第二の性』へと結実する。この物語には、社会通念に縛られない存在であろうとしたボーヴォワール自身の“出発点”が、静かな感情の揺らぎとともに綴られている。
一方、日本からの選出は、昭和文学を代表する円地文子の『女坂』。こちらもまた、女性たちの内面を繊細に描き出す文学的な快作であり、円地が生涯かけて向き合い続けたテーマ—性愛、家父長制、老い、美醜、伝統文化と現代—が凝縮されている。体が弱く幼少期に学校での高等教育機会が限られるなか、私的に幅広い学問を修めた円地は、戯曲から散文へと表現を広げ、日本文学に女性の心理をリアルに描き出す新しい風をもたらした。『源氏物語』の現代語訳を手がけるなど、日本の古典を再解釈し、現代女性の生き方と静かに響き合う作品を残している。
Courtesy of Miu Miu
言葉とともに過ごす、夏のささやかな休息
今回の会場となったうめきた公園では、ボーヴォワールと円地の本が配布されたほか、冷たいアイスコーヒーのサービスも実施。開かれた空の下、特設スペースにはMiu Miuらしい洗練された空気が流れ、訪れた人々は芝生に腰を下ろし、それぞれのページをめくりながら静かな時間を楽しんだ。都市の喧騒を離れ、言葉が人々の間に静かに流れる光景は、まさに「読む」という行為の本質を思い出させてくれるものだった。
Courtesy of Miu Miu
Miu Miuが提案するSummer Readsは、単なる“本の配布”ではない。思想と対話の場を開き、ファッションブランドとして文化とどう向き合うかを体現する活動にほかならない。女性たちの声が社会に問いを投げかけるとき、それは必ずしも大きな声である必要はない。むしろその静けさが、長く深く、私たちの中に残る。
Courtesy of Miu Miu
#MiuMiu
#MiuMiuSummerReads
著者プロフィール:
シモーヌ・ド・ボーヴォワール
1908年パリにて、ブルジョワ階級のカトリック教徒家庭に生まれる。優秀な学生で、ソルボンヌ大学で 哲学を専攻し、1929年史上最年少でアグレガシオン(一級教員資格)試験に合格。同年、ジャン= ポール・サルトルと出会い、生涯にわたる一夫一妻制に縛られない知的な伴侶関係を築く。1929年に亡くなった親友ザザ・マビーユとの友情に深い影響を受けており、その関係が没後に出版された小説『離れがたき二人』(2020年)の題材となった。1930年代は哲学教員として教職に就くも、ナチス占領下の1941年に免職される。決定的なフェミニストの声となり、ジェンダー規範に異議を唱える。1986年4月14日没。サルトルと共にモンパルナス墓地に埋葬された。ボーヴォワールの作品は、道徳や行為主体性、社会構造を考察するものであり、『第二の性』(1949年)はフェミニスト思想に革命をもたらした。代表作は、『他人の血』(1945年)、『人はすべて死す』(1946年)、ゴンクール賞を受賞した『レ・マンダラン』(1954年)など。
円地文子
1905ー1986 年。日本の作家・戯曲家で、ジェンダー、性愛、家父長制社会における女性の抑圧に 対する深い考察で知られる。東京生まれ。本名は円地富美。言語学者の父と、祖母の読み聞かせに 強い影響を受けて育つ。体が弱く、学校での高等教育を受けられずとも、私的に幅広い学問を修める。戯曲で活動を始めるも、後に散文に方向転換し 1950 年代になると認知されるようになる。『女坂』(1957 年)や『女面』(1958 年)などの代表作は、特に 11 世紀に紫式部によって書かれた『源氏物語』といった日本の古典文学を再解釈したものが多く、『源氏物語』は現代語訳を手掛けている。女性の 老醜や性愛を取り上げた先駆者であり、現代の心理学的知見と、能で悲しみに暮れる女を演じるために使われる複雑で種類も豊富な女面などの伝統文化の要素とを融合している。その功績により、1985 年に日本最高の文化的栄誉である文化勲章を受章。また野間文芸賞や女流文学者賞をはじめとする権威ある賞を複数受賞。現在も日本文学において影響力のあるフェミニストの声でありつづけている
お問い合わせ:
ミュウミュウ クライアントサービス
Tel: 0120-451-993

パリと東京、時代を超えて交差するふたりの女性の声
イベントでは、来場者に向けてMiu Miuオリジナルパッケージに包まれた書籍を1冊進呈。セレクトされたのは、フランスの哲学者・作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールの『離れがたき二人』と、日本の作家・戯曲家円地文子による『女坂』。いずれも、時代の制約や慣習に抗い、“女性であること”の輪郭を自らの言葉で描いたふたりの作家による傑作だ。

『離れがたき二人』は、ボーヴォワールの実体験をもとにした少女同士の親密な友情と知性の目覚めを描く未発表作品。1929年、19歳で非常に難関な国家資格とされるアグレガシオン(一級教員資格)試験に最年少合格。同年に出会うジャン=ポール・サルトルと生涯の知的パートナーとなった彼女の思想は、後の『第二の性』へと結実する。この物語には、社会通念に縛られない存在であろうとしたボーヴォワール自身の“出発点”が、静かな感情の揺らぎとともに綴られている。
一方、日本からの選出は、昭和文学を代表する円地文子の『女坂』。こちらもまた、女性たちの内面を繊細に描き出す文学的な快作であり、円地が生涯かけて向き合い続けたテーマ—性愛、家父長制、老い、美醜、伝統文化と現代—が凝縮されている。体が弱く幼少期に学校での高等教育機会が限られるなか、私的に幅広い学問を修めた円地は、戯曲から散文へと表現を広げ、日本文学に女性の心理をリアルに描き出す新しい風をもたらした。『源氏物語』の現代語訳を手がけるなど、日本の古典を再解釈し、現代女性の生き方と静かに響き合う作品を残している。

言葉とともに過ごす、夏のささやかな休息
今回の会場となったうめきた公園では、ボーヴォワールと円地の本が配布されたほか、冷たいアイスコーヒーのサービスも実施。開かれた空の下、特設スペースにはMiu Miuらしい洗練された空気が流れ、訪れた人々は芝生に腰を下ろし、それぞれのページをめくりながら静かな時間を楽しんだ。都市の喧騒を離れ、言葉が人々の間に静かに流れる光景は、まさに「読む」という行為の本質を思い出させてくれるものだった。

Miu Miuが提案するSummer Readsは、単なる“本の配布”ではない。思想と対話の場を開き、ファッションブランドとして文化とどう向き合うかを体現する活動にほかならない。女性たちの声が社会に問いを投げかけるとき、それは必ずしも大きな声である必要はない。むしろその静けさが、長く深く、私たちの中に残る。

■「Summer Reads」イベント概要
日程:2025年6月28日(土)・29日(日) 11時~19時
場所:大阪・うめきた公園(公園内特設スペース)
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町6-86
日程:2025年6月28日(土)・29日(日) 11時~19時
場所:大阪・うめきた公園(公園内特設スペース)
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町6-86
#MiuMiu
#MiuMiuSummerReads
著者プロフィール:
シモーヌ・ド・ボーヴォワール
1908年パリにて、ブルジョワ階級のカトリック教徒家庭に生まれる。優秀な学生で、ソルボンヌ大学で 哲学を専攻し、1929年史上最年少でアグレガシオン(一級教員資格)試験に合格。同年、ジャン= ポール・サルトルと出会い、生涯にわたる一夫一妻制に縛られない知的な伴侶関係を築く。1929年に亡くなった親友ザザ・マビーユとの友情に深い影響を受けており、その関係が没後に出版された小説『離れがたき二人』(2020年)の題材となった。1930年代は哲学教員として教職に就くも、ナチス占領下の1941年に免職される。決定的なフェミニストの声となり、ジェンダー規範に異議を唱える。1986年4月14日没。サルトルと共にモンパルナス墓地に埋葬された。ボーヴォワールの作品は、道徳や行為主体性、社会構造を考察するものであり、『第二の性』(1949年)はフェミニスト思想に革命をもたらした。代表作は、『他人の血』(1945年)、『人はすべて死す』(1946年)、ゴンクール賞を受賞した『レ・マンダラン』(1954年)など。
円地文子
1905ー1986 年。日本の作家・戯曲家で、ジェンダー、性愛、家父長制社会における女性の抑圧に 対する深い考察で知られる。東京生まれ。本名は円地富美。言語学者の父と、祖母の読み聞かせに 強い影響を受けて育つ。体が弱く、学校での高等教育を受けられずとも、私的に幅広い学問を修める。戯曲で活動を始めるも、後に散文に方向転換し 1950 年代になると認知されるようになる。『女坂』(1957 年)や『女面』(1958 年)などの代表作は、特に 11 世紀に紫式部によって書かれた『源氏物語』といった日本の古典文学を再解釈したものが多く、『源氏物語』は現代語訳を手掛けている。女性の 老醜や性愛を取り上げた先駆者であり、現代の心理学的知見と、能で悲しみに暮れる女を演じるために使われる複雑で種類も豊富な女面などの伝統文化の要素とを融合している。その功績により、1985 年に日本最高の文化的栄誉である文化勲章を受章。また野間文芸賞や女流文学者賞をはじめとする権威ある賞を複数受賞。現在も日本文学において影響力のあるフェミニストの声でありつづけている
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