宇宙に行くための繊維とは? 宇宙エレベーターチャレンジに帝人のテクノーラが使用

2013.08.08

静岡県富士宮市で開催される「宇宙エレベーターチャレンジ」において、帝人が製造・販売するパラ系アラミド繊維「テクノーラ」が使用されている。このイベントは、一般社団法人宇宙エレベーター協会が2009年から開催している技術競技会。今年は5回目で、8月7日〜10日まで4日間にわたって開催される。

宇宙エレベーターは、地上と宇宙をつなぐエレベーター。原理は非常にシンプルだが、宇宙から地上へ吊り降ろす強度を持つケーブル素材がないため、夢物語に終わっていた。ところが1991年にカーボンナノチューブが発見され、多様で具体的な建造計画が次々と提案されるようになる。同時に、欧米や日で宇宙エレベーターに必要な技術を開発・研究するための競技会が開催されるようになった。

「宇宙エレベーターチャレンジ」は、クライマーと呼ばれる自動昇降ロボットが高度1,200メートルに打ち上げられた気球と地上とを結ぶベルトとロープを昇降し、その距離や速度を競うイベント。競技会としては世界最大規模になる。

帝人の「テクノーラ」は、1987年に生産を開始した強靱な繊維。高強力、耐疲労性、寸法安定性、耐熱性、対薬品性などに特性を持ち、産業用ロープやケーブル、光ファイバーケーブル、ゴムベルト、ホース、コンクリートなど、幅広い製品の補強材として使われている。宇宙関連では、2011年に打ち上げられたNASAの無人火星探査機「キュリオシティ」と、その着陸時に使用する超音速パラシュートとをつなぐサスペンション・コード(吊り下げ用コード)の素材として採用された。

こうした実績から、「テクノーラ」は2011年から同競技会用のベルトとして採用されてきた。また、今年からは競技用ロープにも使用されている。イベントに使われるクライマーは最大重量50キログラム以上、最大上昇速度は時速100キロメートル以上になるが、「テクノーラ」を使用するベルトとロープなら、安定的な連続昇降が可能になるのだ。

宇宙エレベーターがいつ頃実現するのかはまだ誰にも分からないが、昨年2月には日本の大林組が、2050年に宇宙エレベーターを建造する構想を発表して話題を集めた。実現に際して必要なことは、現在ある技術を改善・改良し、更に高度なレベルまで進化させること。日本の繊維技術は世界のトップレベルにある。既に宇宙へ進出している「テクノーラ」なら、宇宙エレベーターが実現した暁にも、主要素材として使われているかもしれない。
薄井テルオ
  • 「テクノーラ」を使用したベルト(2012年度「宇宙エレベーターチャレンジ」で撮影)
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