インターネット発展にともない、誰もが世界中の情報にいとも簡単にアクセスできるようになった今、ありあまる情報を前に、好みのものや目的とするものの選択に返って時間を要しているという人も多いだろう。
こと音楽は、ある人が絶賛したかと思うと、また別の誰がけなし、一体誰の意見に耳を傾ければいいのかと惑わされることがある。無論、最終的な判断は己に委ねられているとしても、1人指針となる人がいると、それだけで良質な音楽と出合う確率は高まり、例えその人とは異なる印象を抱いたとしても、それはそれで独自の感想を持てた自分が誇らしくなったりするものだ。
現代の日本において、大勢の音楽ファンからそうしたメンター的存在として頼りにされているのが、ピーター・バラカンさんだ。Inter FM「Barakan Morning」を始め数々のラジオ・TV番組で、楽曲やアーティストについて語るその口調には、音楽に対する愛が滲み出ている。そんな真正なる音楽LOVERゆえの目線を持って見た、音楽とファッションの関係性を聞いた。
―まず、ピーターさんは「音楽」と「ファッション」はどういった関係性にあるとお考えですか?
曲がヒットすることにともなって、演奏しているアーティストのファッションを真似する人が急増することがありますよね。その最たる社会現象を巻き起こしたのがビートルズ。彼らが出てきたことによって、音楽もファッションも変わったし、文化はもちろん、社会そのものも大きく変わりました。当時、僕はちょうど中学生くらい。ファッションにも関心を持ち始めた頃で、モッズスタイルに憧れてカーナビーストリートにも買い物に出掛けていました。周りの友達もみんな音楽が大好きで、お気に入りのアーティストみたいにかっこいい服を着こなしたいという想いを抱いていました。
―日本でもそうした社会現象が起こったことはあるのでしょうか?
僕は1974年に来日したのですが、70年代終盤に登場したYMOの影響力はすごかったですよね。メンバー3人のテクノカットはもちろん、彼らがまとっていた洋服や靴にまで注目が集まりました。
靴といえば、デビット・ボウイやザ・クラッシュが履いたことで一躍有名になった「ロボット(Robot)」のラバーソールも、日本のミュージシャン達がこぞって愛用していました。
―ファッションや音楽の歴史を紐解いていくと見えてくる共通点ってなんでしょう?
まず、ファッションも音楽もその時代の空気を反映しているものだという共通項があります。「流行」という意味では、ファッションならメーカーが作り上げるものだし、ポピュラーミュージックは、いつの時代もレコード会社やプロデューサーが意図的に生み出すものです。
だけどそれとは別に、真にクリエーティブなミュージシャンが作った音楽が、結果的に時代を引っ張っていくことはあるし、ファッションの世界においてもそれは同じこと。すぐにマスに理解してもらうことは難しいとしても、いつの日か日の目を見る可能性を秘めていると思います。
―真にクリエーティブであるために必要な要素とは何だとお考えですか?
想像力。技。ぶれない勇気。信念。そういうの全部をひっくるめて必要ですよね。もちろん、これは音楽やファッション業界以外においても言えることです。
2/2に続く。