2007年に高級プレミアムジーンズブームが終焉してから、この数年間は一般的にジーンズ不振と言われており、百貨店の自主編集ウィメンズジーンズ売り場も例外ではない。改装の結果、ウィメンズジーンズ売り場が無くなった百貨店もあると聞く。
そうした中、堅調に業績を維持する売り場もある。阪神百貨店梅田本店の「ジーンズハウス」と阪急百貨店うめだ本店の「ワールドマップジーニスト」はお互い真逆の取り組みだが、独自の工夫がそれぞれ支持を集めている。この二つの売り場の取り組みを見る。
阪神百貨店梅田本店の自主編集ウィメンズジーンズ売り場「ジーンズハウス」は西日本だけではなく全国的に見ても百貨店業界ではトップクラスの売上高を誇る。以前は100坪の広さがあったが、現在はトップス類を並べていた40坪を削減して、ジーンズ類に特化した60坪の売り場となっている。しかし、ボトムスの売上高は100坪の面積があったころと変わっていない。
関西圏では庶民的なイメージで親しまれている阪神百貨店だが、「ジーンズハウス」も庶民的な客層に支えられている。20代から50代までと客層の幅は広いが、中心は30・40代である。ジーンズ不振でも30代以上はジーンズを愛用する率が高い層として知られている。庶民的な顧客が多いのでエドウインの「サムシング」、リーバイス、ビッグジョンの「ブラッパーズ」などナショナルブランドを主体とし、インポートブランドなどを幅広くそろえる。価格はミドルプライスから1万円台半ばが主流。60坪という面積を生かしてできるだけ多くのブランド、品番を見せるという手法を採る。
一方、阪急の「ワールドマップジーニスト」は15坪という面積なので「ファッション」的な切り口で統一する。1万円以下の商品を無くし、ナショナルブランドよりもインポートプレミアムブランドや「マウジー」などのファッションブランドを重視する。その中でも最も強い品番のみに絞って陳列しているため、ブランドによっては1品番のみを扱う場合もある。これまではライバル関係の両店だったが2006年の経営統合以来、補完関係が求められることとなった。昨年11月21日に改装リニューアルオープンしたが、その際、100坪の売り場にするプランもあったという。しかし、同じグループ内で競合しても仕方がないということで15坪に収めた。
幅広く多くの品番を見せる「ジーンズハウス」と、ファッションを切り口とした強い品番のみを並べる「ワールドマップジーニスト」だが、共通している点もある。それはどちらも月に2回は中央ステージのディスプレイを変えることである。それも漫然と変えるのではなく、売り場からの提案商品や旬の商品をディスプレイする。これは売り場の鮮度を保つためになされた工夫であり、自然と同じ結論にたどり着いたのだろう。あと、両売り場ともワークショップやイベントを志向しており、参加型にすることで顧客との関係性を強める目的がある。「ジーンズハウス」はすでに何度かワークショップを開催しており、「ワールドマップジーニスト」は今後イベントの開催を模索している。
百貨店に来る客層の多くは「実用品」を求めているのではなく、ある程度「ファッション用品」や「嗜好品」を求めている。これは大衆的な店舗であろうが、ファッショナブルな店舗であろうが同じだ。そういう意味では売り場からの「提案」は重要な要素だろう。