彫刻家のアルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)は1901年10月10日生まれ。スイス・ボルゴノーヴォ出身。1966年1月11日逝去。
スイス印象派を代表する画家ジョヴァンニ・ジャコメッティ(Giovanni Giacometti)を父に持ち、幼い頃から父のアトリエで絵画や彫刻を制作していた。19年に高校を卒業するとジュネーヴ美術学校に進学するが、わずか数日で画家としての活動を断念。その後はジュネーヴ工芸学校のモーリス・サルキソフの下で、彫刻の修行に没頭する。22年にはパリに移住しており、美術学校アカデミー・ド・ラ・グランド・ショーミエールへと進学。アントワーヌ・ブールデル(Antoine Bourdelle)の門下となると、その作品は次第にキュビズムの影響を受けていった。27年にはパリのサロンで初めて作品を発表している。
30年代に入るとジャコメッティは、当時のパリを代表するシュルレアリスト達と盛んに交流している。その中で生まれたのが、30年に発表された『吊るされた球』だ。この作品は二つの立体を糸で吊るしたもので、これをダリは“象徴的作用のためのオブジェ”と呼んでいる。両者が男と女を表しているなど、後にフロイト的な視点などから様々な解釈が行われた。
以降もシュルレアリスムを探求していたジャコメッティだが、30年代後半に入ると、その作風は人の身体が備えるリアルさの追求へと転向。人体から余分なものをそぎ落とし、糸のように細く伸ばした彫刻作品を次々と発表する。さらに、40年代後半からは、このモチーフをデッサンやタブローなどにも描き落とした。
晩年になるとジャコメッティの作品は高く評価され、69年には版画集『終わりなきパリ』を発表。過去に制作したリトグラフ150点が収録され、彼の目に映った当時のパリの光景がありのままに描き出されている。