仕事や家庭など、様々な場面で活躍する女性達を紹介するインタビュー企画「輝く女性の秘密」。第7回は、子供向け創造・表現活動を推進するNPO法人・キャンバス(CANVAS)の理事長であり、絵本のアプリを製作する株式会社デジタルえほんの代表を務める石戸奈々子(いしど・ななこ)さん。未来を作る子供達のために、日々奮闘する石戸さんに話を聞いた。
――今年設立10周年、石戸さんが主宰されているCANVASでは、どのような活動をされていますか?
CANVASでは、子供達の創造力やコミュニケーション力を育むような活動を産官学連携で推進しています。これまでは知識を詰め込み、暗記することが重要視されてきました。しかし、情報化社会になりいくらでも情報が手に入るようになった今、その相対的な価値は下がっています。現代の子供達に求められているのは、コンピューターには代替出来ない力としての、他者と協働しながら新しいものをつくり出す力、創造力とコミュニケーション力だと考えています。だからこそそのような力を育むワークショップなどをCANVASは企画・運営しています。
――石戸さんが代表を務めているデジタル絵本との繋がりは?
私達の活動は、ワークショップやイベントの開催に加え、子供達の学びを支える大人のネットワーク作りなど、多岐に渡ります。その中で、家庭でもクリエーティブな活動ができるようタブレットやスマートフォンを活用した、子供向けデジタルコンテンツも作っています。作家の方々もかかわって頂いているので、デジタルえほんに関連する事業を便宜上、株式会社化していますが、すべての活動は連動しています。
――最近の活動の中で心に残っているプロジェクトはありますか?
今年10回目を迎える「ワークショップコレクション」が、青山学院大学青山キャンパスで8月29・30日に開催されました。CANVASは子供達が 何かをつくって表現する場、それを支える企業、自治体、学校、ミュージアム、地域、家庭など大人達が手を取り合う場、この二つの“場”を作ることを大事にしてきました。それを可視化したのが「ワークショップコレクション」です。
第1回目は来場者500人でしたが、回を追うごとに規模が大きくなり、前回は2日で10万人が来場するまでに成長しました。数値目標を掲げてきたわけではありませんが、やはり感慨深いですね。もともとすべての子供達に学びの機会を提供したいという思いで始めたワークショップコレクションですので、ワークショップコレクションに合わせて、全国で同時にワークショップを開催することで、日本中で盛り上げていけないだろうか?と考えました。そこで、今年からはクリエーティブキッズデイという企画を始めました。子供達の「創る」を応援する年に1度のお祭りを催そうというものです。
今年は北海道から沖縄まで、全国から約150のワークショップが参加してくれました。愛知ではワークショップコレクションと同じ日に、24のワークショップが一同に集うワークショップギャザリングが開催されています。
――多くの人とかかわり合いながら、成長してきたのですね。
そうですね。私達の力というよりも、子供が持っている力の大きさに驚かされます。子供達は創造力はもちろん、求心力も持っています。子供に関連する活動を続けていると、子供を“未来の宝”だと思う大人達が、支援の手を差し伸べてくれるのです。
――多忙な毎日を過ごされていますが、アクティブに活動する秘訣は?
毎日を楽しむことでしょうか。私は仕事とプライベートの垣根があまりないんです。ただ、4歳の子供がいるので、出来るだけ一緒に過ごす時間を作るようにしています。そのために、仕事のスタイルを変えて、同僚やスタッフなどと仕事を共有して、任せられることは任せています。私自身も、やらなければならないことは先延ばしにせず、その日のうちにやってしまうなど効率的に仕事をするよう心掛けています。
――10年後の自分の姿を想像すると?
今、好きな人達と好きなことをやっていているので、10年後も同じように活動していたい。この活動を海外にも広げてみたいと思っています。海外のクリエーティブで面白いものをワークショップコレクションで紹介したり、海外で開催したりすることも考えています。
――憧れている人はいますか?
鉄の意志と実行力を持つイギリス初の女性首相マーガレット・サッチャーさん、ルパン3世に登場する女性らしさが印象的な峰不二子さん、日本人女性らしい穏やかな立ち振る舞いの美智子皇后陛下が素敵だなと思います。
――それぞれ個性的でパワフルな面々ですね。では今一番会ってみたい人は誰ですか?
次の時代をつくっていく天才キッズ達に会いたいですね。最近、インターネットを活用する世界中のキッズやティーンの活動をまとめた冊子「インターネットで 出来ること」を発行しました。今の子供達は、新しい表現ツールや発信ツールを手にして、私達には想像も出来ないような活躍をしているんですよ。
後半「ゲタの音が明るく響く、自然体の魅力」へ続く。