日々進化を遂げるIT技術を、ファッション分野に応用してイノベーションを試みようとするベンチャー企業を取材・レポートする本連載。第3回目はオンラインセレクトショップ「All Aboutスタイルストア」・「ギフト専門サイトCOCOMO」を取り上げる。
「スタイルストア」は、様々な目利きの人たちが厳選した暮らしに関わる選りすぐりの約一万アイテムを販売する、オンラインセレクトショップ。ギフトショッピングサイトの「COCOMO」は、ギフト診断など他にはないサービスで、喜ばれる贈り物を楽しく選べると評判だ。この二つを運営する清水正樹氏に、独自のビジネスモデルや、今後の展開について聞いた。
--「スタイルストア」と「COCOMO」がスタートしたきっかけは?
当時はモール全盛期で、ネットショップはどこも少しでも安くすることで集客をしていた。そんな価格競争に巻き込まれないためと、コンセプトがはっきりしたネットショップがまだなかったこともあり、「こだわりのあるアイテム」だけセレクト、して販売する「スタイルストア」と「COCOMO」を立ち上げた。
当初は雑誌のようにサイトでスタイル提案をして売ろうとしたが、アクセスは良かったが、売り上げにつながらなかった。そこで、”モノ”にスポットライトを当てることにした。作った人の顔写真や生産の裏話を紹介するなど、モノ作りのバックグラウンドを紹介して、ストーリーで商品の良さをアピールするアイデアもその時からだ。
--バイヤーはどんな方?
バイヤーは、リアル店舗出身者ばかりで、初期からのメンバーがほとんど。2006年に入社したあるバイヤーは、事業拡大の時期に価格訴求をしないビジネスモデルに惹かれて入社。まずは、ネットや雑誌、展示会などで地道に作り手を探してきた。彼女によると、売れる商品を作る人は、デザインなど意匠のオリジナリティだけでなく、ビジネスのセンスもある、バランス感覚のとれたクリエーターだという。独自の戦略として、良いモノを作っているが、まだ販路を持っていない作り手を探して、他にはない商品ライナップを実現している。
--オンラインだからこその強みは?
お客様からの意見がダイレクトに届くこと。スタイルストアでは、購入者が商品についてのレビューを書くことができるようになっており、それが積極的に活用されている。良いモノを探している人は他の人の役にも立ちたいと思うようで、作り手のモノが好きで応援したいと思っているお客様が多いため、書き込みが多い。そこからの意見を参考にオリジナル商品や先行販売商品を作って、品揃えの多い大手オンラインモールとの差別化を図っている。
例えば、自分でも使っている革小物ブランド「エムピウ(m+)」の財布は、お客様からのレビューを元に商品を改良して商品化したもの。本来財布はよく買い替える人が多いのだが、この財布は仕様が特殊なのでリピート率が高い。
--オンラインならではの難しさは?
ECで重要なのは集客だが、ネットショップのリピーターを増やすのはリアル店舗よりも難しい場合がある。基本的にネットユーザーは移ろいやすい。リアル店舗だと、近所にあるとか、よくこの町に行くからということでリピーターになってくれる可能性があるが、オンラインではそれができない。そのため、なぜそのショップでの買わなければいけないのかという動機づけが必要。メルマガや会員セールなど、会員に登録ないと使えないサービスを提供するなどして、リピーターを増やす工夫をしている。
ネットショップは手軽に始めらるが、ライバルが多く競争が激しい。だからこそ、他とは違うアイデアが必要だ。
--今後はどのような展開は?
日本はまだ不景気だが、人への贈り物はそれなりに今までと変わらずお金も心もかけるものであり続けると思っている。株式会社オールアバウトの江幡哲也社長も、経営者なのでギフトを贈ることが多いようで、ギフト需要に注目しているようだ。
贈る方も貰う方も楽しめるギフトを提案していきたい。そして、「ここに来ればいいものが揃っている」とも思ってもらえるようなショップづくりを追求したい。「COCOMO」では、2012年10月に、商品だけでなくパッケージも選べて、さらに自由なメッセージもつけてギフトを作れるサービスを開始した。お店に行かなくても、オンラインでここまでのサービスができるようになっている。この調子で、ネットショップの可能性を広げていきたい。