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ハイク(HYKE)の21年春夏コレクションがオンラインで発表された。無観客のゴーカート場をランウェイにウィメンズ40ルックス。ネックラインやウエストのシャーリング、ローゲージのニットにプリーツスカート、フリンジやオーガンジーなどをミリタリーなメンズアイテムや医療用ユニフォームのディテールを組み合わせることで、独自のフェミニティを更に進化させた。
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この数シーズンの海外のファッショントレンドの核となる要素の多くはHYKEがブランドデビューから変えていないそのエレメントとなるものだ。「ミリタリー」「ユニフォーム」「ワークウエア」「アウトドア」「テーラード」といったメンズウエアのベースを「ミニマム」に「スポーツウエアの資材」をアクセントに、上質な仕立てで都会のウィメンズウエアとして完成させていく。
デビュー以来、デザイナーである吉原秀明と大出由紀子の発表する「ジェンダーレス」で「ミニマム」なアイテムは、メンズラインを正式に展開していないにも関わらず、男性からの人気が高かった。それはすべてのアイテムの前身頃の打ち合わせがメンズ仕立てというこだわりに加え、いまやメインストリームとなった「オーバーサイズ」のブームの源流が、このブランドにあったのではないかと思ってしまうほどだ。
さらにコラボブームの先駆けとなったマッキントッシュ(MACKINTOSH)、ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)、アディダス(adidas)との「スポーツ」や「アウトドア」専業ブランドとのコラボレーションを振り返っても、単にロゴデザインのコラボでは無く、それぞれのブランドの「ヘリテイジ」にある機能性とデザイン性が、ラグジュアリーなモードに新しい市場の可能性を提案したとも言える。
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今回のショーでHYKEはこれまでのシーズン同様に、余計なモノをそぎ落とし、全体のバランスのデザインを強調させた。レディスウエアの基本とも言えるシルエットに重点が置かれ、それはシルエットを見ただけでHYKEだと分かるアイデンティティをそこに求めたようにも見える。そのため、各アイテムの色数は抑えられ、コレクション全体を見ても白、黒、ネイビー、カーキ、ベージュの無地、それにストライプ。今シーズンはフランスのヴィンテージ・ワークウエアに見られる鮮やかなブルーとサックスが加わった程度だ。
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素材は綿、麻、ウールを中心に人工スエードなど、やや重みにある素材使いでオーバーサイズのシルエットを美しく描き出している。超軽量の撥水・ウインドプルーフ・通気性のあるハイテク素材PERRTEXやラミネート加工された光沢のあるロングミリタリーコートやポンチョなどが新しいが、リュックやクロスバッグのアクセサリーを組み合わせることでフォルムを変化させる。20/21秋冬シーズンからの流れのフリンジがヘムに動きを作り、アシンメトリーなデザイン、オックスフォードやグログランなどの厚手の生地に同色のオーガンジーのゆったりした袖、フリルのショールを組み合わせることで、今のウィメンズのハイブリッド感やフェミニティがHYKEらしい表現で提案されていく。無駄なコンセプトやテーマがそぎ落とされ、“ニューノーマル”“新生活様式”などの言葉が一人歩きする時代に、ふわりと“風”が吹いたコレクションとなった。
尚、これまで一部のセレクトショップの別注対応だったメンズサイズが、今シーズンからPERTEXのコートをはじめ一部のアイテムにおいて、メンズ用、トールサイズとして4、5サイズが展開されるようになった。
Text / Tatsuya Noda