人気ブランド「ビズビム(visvim)」を率いる中村ヒロキ。変転とする世の中において、ぶれずにモノ作りを行っている。世界中を旅する彼に、モノへのこだわり、今の心境を聞いた。
――ファッションに興味を持ったきっかけは何ですか?
母や叔父がファッション好きだったので、幼少の頃から自然に興味を持つようになりました。小学生の頃は「こういう格好をしたい、このジーンズじゃなきゃイヤだ」と思うようになりました。その後“ファッション”として捉えて、「何を着よう」と感じ始めたのは・・・13、14歳頃かな?よく、弟や友達と珍しいジーンズを買いに行っていた覚えがあります。
――思春期にファッションへ興味を持ち始めたということですが、当時は「モテたい」や「オシャレしたい」と強く意識していましたか?
思春期にかかわらず、みんな無意識に「アテンションを集めたい(注目を引きたい)」というモチベーションは絶対どこかにあって、それが「コレにこだわりがあるからあの人とは違う」みたいな、自己表現になっていくと思っています。僕は「自分で決めたい、自分が好きな物を着たい」という意識が強かったのだと思います。娘も僕がすすめてもピンと来ていない時がありますし、やっぱり、本人に物への想いが伝わらないとダメなんだと思います。
例えば、今日履いているビズビムのコーデュロイパンツは5年位履いていて、ポケットは穴だらけですけど、内側から作っている商品には中から輝くものがにじみ出てきます。それと同時に作り手としての自分自身の中身、要するに自分がどんなものを着たくて、何を作りたいのか。自分が何をしたくて、どんな人でありたいかを深く考えるようにしています。
――このこだわりがご自身のブランド創設につながったのでしょうか?
10代や20代前半の頃に、好きな物を集めていく中で「何で、コレが欲しくて、コレは欲しくないのか?」というような疑問が次々と生まれてきました。そして20代後半になった頃、「自分が着たくて、好きな物を作ろう」と思うようになったことが始まりです。
――趣味や関心は昔と今で変わりましたか?
元々「自分が好きなことをやりたい」と思っていたので、世界中の理解し合える方達と一緒にもの作りをするこの仕事自体が趣味みたいなもので、ものを作るのであれば良いもの、残っていくものを作りたいという思いがまずあって、じゃあどうすれば、そのオーセンティックなものが作れるだろうということを試行錯誤しながら、いろんなアプローチを自分たちなりに試しています。
この前、日本の刀鍛冶さんが作った包丁を買った時は「なぜ、この包丁は普通のものと違うのか?」と説明してくれて、一時間位聞き入ってしまいました(笑)。そういうのは刺激をもらうので凄く楽しい。
やっぱり環境から影響を受けることもあるので、オーガニックな雰囲気や居心地が良いところは好きです。最近、生産チームが森に囲まれた一軒家に移動したんですけど、自然光が入ってとても気に入っています。
――仕事で世界各地を回っていて感じることはありますか?
18歳頃から毎日が旅行みたいな生活をしていましたけど、それぞれの国や地域で綺麗に見える景色が違うことが面白い。山や川、空気が影響していると思うけど、日本だと淡かったり、グレーみたいな色が美しく見えたりする。他にも、今はストロベリーの季節じゃないですか?日本のイチゴはもの凄く美味い。あまおうなんて本当に美味しいですからね。日本にずっといると、そういう感覚って忘れてしまったりもします。
香港やロサンゼルス、ニューヨーク・・・など世界中を歩いていて色々なお客さまに出会うのですが、ビズビムを履いた方は同じクオリティーというか、みんな似ているように感じる。それが凄く嬉しい。商品を通したコミュニケーションができるんだと実感するので、だから僕も、商品を通じて自分が考えていること・感じていることがクリーンに伝わるように意識しています。
昔だったら伝言ゲームみたいに色々な人のフィルターがあって全く違うことになったりして、それが意外と商品を面白くしていたと思うのですが、今はインターネットで世の中がフラットになってしまったから、それを意図的にやるには作り手が動くしかない。動けば変わってくると思っています。
――4月10日から16日まで、伊勢丹新宿店ザ・ステージでポップアップショップ「visvim F.I.L. INDIGO CAMPING TRAILER」が予定されていますが?
ポップアップショップは時間的な制限があるだけで、自分は常に「嘘のない空間」を作り上げることを心掛けています。楽しみにしていて下さい。
*vol.2へ続く