SFが現実だという事実をスポーツウェアで語るアンダーカバー
グレーのマキシプリーツスカートにやわらかな薄いニットだけのファーストルック。アナウンスや舞台にブランドサインもないため一瞬どちらのブランドから始まったのか戸惑う(編集部注: 当日は各シートに「Part1 UNDERCOVER, Part2 theSoloist.」と記されたステッカーが置かれていたが、始まる前に持ち去られるケースもあった)。続くマキシスカートにパーカー、チェックの縮重加工されたジャケットのセットアップなどで、アンダーカバーが先行を得たことを判別し、少し驚かされる。というのも、2009年6月の同展で、アンダーカバーはメンズコレクションを既に一度発表しており、今回海外で初めてのランウェイ・コレクションを発表するソロイスト.がトリという順番自体が、通常の常識や感覚を裏切っていたためだ。しかしながら、確かに両者らしい選択。
天然素材中心に洗いをかけたやわらかな風合いのアイテムを中心に、リュックや斜めがけバッグ、ゴム長ブーツなどのアイテムによってキッチュでポップなカラーがミックスされていく。マウンテンジャケットやダウンベストなどのレイヤード、高密度ナイロンやリフレクト素材などのテクニカル素材を、洗いや大胆なフォトプリントなどさまざまな加工やテクニックで、分かりやすいスポーツアイテムに仕上げる創造性は、イタリアの専業メーカーが今まさに変化への対応を急がれている見本のようなワードローブ。
Human Errorとプリントされたアイテムや、『2001年宇宙の旅』の映画シーンのプリント、フィナーレは宇宙服のようなダウンアイテムに身を包んだロボットが歩くというシニカルな演出で「Order/Disorder」という今回のコレクションテーマの謎解きを観客に委ねる。
「人間が機械に支配されていることへの警告的な意味合いはあるが、ネガティブなメッセージを発信したかったわけではない」とショー終了後のバックステージで高橋盾が外国人プレスに囲まれながら丁寧に質問に答える。スタート時から変わらない自身のデザインソースへのアティチュードを穏やかに示す態度は、パリコレを舞台に積み上げてきたこれまでのキャリアの深さと重さを感じさせる。