リカルド ティッシがアーティスティック・ディレクターとして就任し10周年を迎える今シーズン、ジバンシィ(Givenchy)はパリを飛び出しNYファッションウィークでランウェイを行った。
ニューヨークはデザイナーにとってアメリカンドリームの象徴であり、アメリカは創業者ユベール・ド・ジバンシィがオードリー・ヘップバーンなど数多くの映画衣装を手掛けるなど、両氏にとって深いつながりがある土地。そして、9月11日という世界中の人にとって忘れられない日に行われたショーでは、リカルドの壮大な愛が込められた、スピリチュアルな世界が繰り広げられた。
会場はトライベッカのハドソン川沿いに建てられた巨大な野外ステージ。ジュリア・ロバーツを始めとする多くのセレブリティ、有名デザイナーや業界関係者、学生や近隣の住民など、駆けつけた多数のゲストを擁した。会場内にはリサイクル素材を用いた6つの小屋が建てられ、間を抜けるようにランウェイが長く続く。小屋の上には、リカルドが数々のプロジェクトを行うマリーナ・アブラモヴィッチと共同で作り上げた普遍的テーマ(愛、平和、自由、精神性など)を象徴するパフォーマンスが終始行われていた。
コレクションはリカルドの原点回帰とも、継続の一部とも呼べるべき果てしないコントラストの世界。色は白と黒。シンプルとコンプレックス。マスキュリンとフェミニン。厳格さと繊細さといった対比は、タキシードディテールとランジェリーを融合させたスタイルからも読み取れる。そして、オートクチュールメゾンとしての技術を惜しみなく注ぎ込んだドレスは、ハンドステッチで刺繍されたスパンコールやビーズ、真珠やビジューなど豪華な装飾が施され圧巻の一言。壮大なスペクタクルショーに美しい華を添えた。