カール・ラガーフェルドから日本のアニメ製作会社・ガイナックスまで、様々な気鋭のクリエーター達とのコラボレーションプロジェクトなど話題が尽きないシャンパーニュメゾン「ドン ペリニヨン」。今冬パートナーに選んだのは、フランスのANDAMファッションアワード2014年度グランプリを受賞した気鋭のファッションデザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペン(Iris Van Herpen)だ。
今回彼女は、「ドン ペリニヨン ヴィンテージ2004」のボトルと限定ギフトボックス、そしてスペシャルアートピースを発表。日本でも全国主要百貨店などで「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2004 イリス ヴァン ヘルペン ギフトボックス」(2万1,000円)と「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2003 イリス ヴァン ヘルペン ギフトボックス」(4万1,000円)が販売されている。ローンチに際し来日したイリスに今プロジェクトについて聞いた。
――まず、ドン ペリニヨンについて具体的にどんな印象を持たれましたか?
ドン ペリニヨンの歴史と世界観は、パワフルでクリエーティビティーに満ち溢れています。フランスのエペルネにあるドン ペリニヨンのセラーにも訪れ、醸造最高責任者、リシャール・ジェフロワ氏からシャンパーニュについて多くのことを聞きました。シャンパーニュは、その長い醸造プロセスの中で、様々な変化を経て、やがて熟成のピークを迎えます。そうしてドン ペリニヨンのアイデンティティーが醸成されていくのだと理解したのです。
リシャール氏がシャンパーニュについて情熱的に語る様子に、まるで詩を綴っているような印象を受けました。このエペルネでの素晴らしい経験も、ビジュアルとして作品に落とし込んでいます。
――(今プロジェクトの)テーマは「メタモルフォシス(Metamorphosis)」ですが、このワードからインスパイアされたことは?
変容、再生、進化といった意味を持つこの言葉から、自然の中に存在する「変容」を象徴するものとしてコクーン(繭)のモチーフを思いつきました。アートピースは蚕がコクーンの中で時間を掛けて蝶になっていく様子を素材やシルエットで表現し、その中にドン ペリニヨンが抱かれるように収められるものです。時間と共に進化していく変態の様子は、ドン ペリニヨンの醸成プロセスとも重なりませんか。
――あなたのコレクションは、最新テクノロジーを用いて作られることで有名ですが、今回もそのように製作しているのでしょうか?
テクノロジーに、オーガニック(有機的)なものやクラフトの要素を融合することはいつも私のクリエーションのテーマにあります。今回も、複雑で立体的なデザインを具現化するのに不可欠である3Dプリンターを用いて、有機的なものであるワイン作りを表現しました。よく誤解されるのですが、私にとってテクノロジーとオーガニックは対極にあるものではありません。両者はバランスを取るのに必要なものであって、互いに補い合うものなのです。
――今回、新しい挑戦だったことはありますか?
以前、デザイナーのヨラン・ファン・デルヴィール(Jolan Van der Wiel)と一緒に、「磁界」をコンセプトにしたコラボレーション作品を作ったことがあるのですが、今回、それを更に進化させて、コクーンのシルエットを磁界の構造を元にデザインしています。また、蚕から出るココネーゼ(粘液)をイメージさせるこの不思議な質感は、「フェローフルート」という NASAのために開発された液体状の金属を使用して実現しました。
――同時にデザインされたギフトボックスも素敵ですね。
ギフトボックスにはコクーンをデザインしています。細部まで繊細に再現しました。深いグリーンは自然の象徴であり、シャンパーニュの醸造プロセスをイメージした色でもあります。
一見このデザインは左右対称に見えますが、よく目を凝らすと対称ではないことが分かると思います。アートピースもそうです。自然界には、遠目では対称に見えても実際には非対称であるものが多く存在しますから。例えば指紋などもそうですよね。
――あなたにとって、コラボレーションとは?
インスピレーションを与えてくれるものです。新しい考え方に触れることで、それまでの自分が持っていた固定観念や習慣を壊すことが出来ますから。これまでも様々なジャンルのクリエーター達とコラボレーションしてきましたが、今回もこんな素晴らしい機会に恵まれたことを感謝しています。
――今回来日されて、日本からもインスパイアされましたか?
もちろんです!まず、私が暮らすオランダはあまり高い建物がないので、高いビルから景色を一望するのにとてもわくわくしました。日本の文化や言葉、食事、ディテールへのこだわり、古いものと新しいものが混在していること、それに大都市なのに平和であることに感銘を受けました。美術館や博物館もとても興味深いですね。