小説家のフィリップ・K・ディック(Philip K. Dick)は1928年12月16日生まれ。アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身。82年3月2日逝去。
二卵性双生児の一子として生まれたが、双子の妹は40日後に死去している。この出来事は彼の作品、人間関係、人生にまで影響を与え、多くの作品に「幻影の双子」のモチーフが登場する原因となった。1952年の小説『ウーブ身重く横たわる』で本格的にデビューし、55年の長編『太陽クイズ(偶然世界)』で注目を集めた。
63年、歴史改変SFの『高い城の男』でヒューゴー賞を受賞し、SF界の天才と称されたが、出版社との折り合いが悪く、経済的には恵まれなかった。75年には、未知のパラレルワールドで目覚めた有名人を描いた『流れよ我が涙、と警官は言った』でジョン・W・キャンベル記念賞を受賞した。
彼は生前、44編の長編と121編の短編小説を書き、そのほとんどがSF雑誌に掲載された。しかし、作家としての活動中は常に貧乏で、死後に作品が映画化されヒットしている。映画化作品として、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が原作の『ブレードランナー』、2012年にリメイクされ話題となった『トータル・リコール』、キアヌ・リーヴスとウィノナ・ライダー出演の『スキャナー・ダークリー』、スティーブン・スピルバーク監督、トム・クルーズ主演の『マイノリティ・リポート』などがある。
作風はSF小説の皮を被った哲学小説と称されている。全体を貫くテーマは「現実はすべて虚構である」こと。神秘体験なども経験し徐々に神学的な要素を帯びていく。晩年には最高傑作となる『ヴァリス』『聖なる侵入』『ティモシー・アーチャーの転生』のヴァリス3部作を発表した。
82年に脳梗塞で倒れ、帰らぬ人となった。