4月2日から始まった、国内最大級のファッション見本市「ファッション ワールド 東京 2014 【春】」にて、三越伊勢丹ホールディングス・大西洋代表取締役社長と、ラフォーレ原宿・川崎俊夫代表取締役社長による基調講演が行われた。
大西社長は、「ファッションにおける今後の価値創造」について話した。全体的に下降状況にある市場ではEC業界のみ業績を伸ばし、日銀の金融政策で高額の貴金属は売れるようになったが、依然衣料品は厳しい状況にあることを指摘。また海外のラグジュアリーブランドを例に挙げ、すべてのブランドにおいて服よりも雑貨の購買シェアが高く締められていることは異常事態だと言い、アパレル分野においての顧客価値の追求が課題だとした。そして「ジャパンラグジュアリーの構造」を案に掲げ、技術・伝統・文化・職人技すべてを凝縮した“日本の一流”を作り上げることが大事であると説いた。若者の感性は日本が世界でも最も優れており、それを有効に育てて"made in japan"にこだわったモノ作りをすれば、他国に負けないと強く主張。
また三越伊勢丹では、ベンチマークは百貨店ではなく「お客様」と断言。消費者のための努力は惜しまず、取引先との協業なども率先して行い、常にニーズに耳を傾けた企業でありたいと続けた。一番売れる価格帯「プライスライン」よりも上乗せした金額で商品を提供し、ここに付加価値を付けることで価格に見合う価値のあるものを売るとする。これは客単価アップを図ることもあるが、実際「プライスライン」よりも低価格帯のものは売れ行きが悪く、付加価値が付き価格が上がったものがよく売れると実績に表れているという。「価値>価格」の定義を実証していると述べている。購買客層の洗い出しで、新宿店はリモデルを続けていくという。
川崎社長は、「ファッションの街原宿 今後の展望とラフォーレの戦略」について話し、ラフォーレが出来るまでの道筋から、「原宿という街」全体がカルチャーやファッションの発信地として成長を遂げたことを回顧。「常に原宿という街がステージであり、クリエーティビティーが豊かでお洒落な人達が集う場所である。みんながデザイナーであり、モデルであり、スタイリストである。常に新しいものを作り発信していくエネルギーに溢れる街だ」と述べた。
昨年秋には世界初の姉妹ストリートとしてロサンゼルスのメルローズストリートとシスターストリート協定を締結したことを受け、「アジアの各都市に日本の誇る“原宿Town”を輸出し、各地で“Little HARAJUKU”を作ることが目標。そうすることで、かならず本家の原宿に人が更に集まるようになる」との見解を示した。
この基調講演は、先立って内容と登壇者を発表したところ応募が殺到し、室内は満席で立ち見が出るほどの盛況ぶり。急遽別室でサテライト放送を流すほどまでに至った。