旅行会社のエイチ・アイ・エス(H.I.S)とANAセールスは、訪日旅行の需要を創出するための合弁会社を設立することを発表した。2015年春の営業開始を目指す。出資比率はそれぞれ51%、49%。
新会社は両社が持つ観光商材を結集することで、新たなパッケージ旅行型商品の創造を目的としている。こうして開発された日本旅行を、海外58ヶ国と進出国数で世界一を誇るH.I.Sが店舗、およびウェブで販売。同時にテレビCMやチラシなどを利用して、海外でも広く宣伝していくという。
なお、新会社は目標の一つとして地方都市の活性化を掲げている。これを実現するために、国内51都市、115路線、1日817便という、国内線では最大規模を誇るANAのネットワークを活用。国際線ネットワークからの接続需要を取り込むことで、従来では国際線の就航都市を中心としていたツアーに、新たなバリエーションを展開する。また、販売されるのはあくまで日本の国内旅行のため、来日にどんな国際線を使っても良い点が、新商品の特徴となりそうだ。
安倍政権では東京オリンピックが開催される2020年までに、訪日外国人2,000万人を目指すという、新たな指針を打ち出している。今回の新会社設立は、こうした海外、特にアジア圏で急増している訪日旅行への需要を受けてのもの。国内では少子化のため旅行需要の増加がほぼ見込めない状況だが、海外からの旅行客を取り入れることで、全国各地まで経済の活性化を促すような仕組みを作ることが狙いだ。
新会社で副社長に就任予定のANAセールス 廣岡伸雄氏は「ANAには各地の自治体や観光施設と、様々なキャンペーンをしてきたノウハウがある。従来は国内向けが中心だったが、今後は地域と連携したサービスを世界にアピールしていきたい」とコメント。ANAセールス社長の白水政治氏も「ゴールデンルートだけでない、日本全国各地のインフラを使いながら、地方都市の活性化につながるような事業を展開したい」と話した。
ANAでは各県の特産品を使った料理や地酒の提供などを行い、地域活性化に貢献する「テイスト・オブ・ジャパン」を13年9月から提供している。こうした地方と連携したサービスを、今後は訪日観光客向けにも提供していくことになるだろう。
一方、H.I.Sの平林朗社長は「弊社では“チャオ”という比較的自由度の高い商品を扱っているが、新会社ではこれと同じように、ある程度お客様の希望や変更に合ったパッケージを提供したい」とコメント。海外でも最近ではニーズが団体旅行から個人旅行にシフトしているため、これらを反映出来るような自由度の高いサービスを提供していく計画だ。