9月14日、3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)が2016春夏コレクションを発表した。今回はブランド10周年にあたる節目のコレクションで、コンセプトは「足をとめて、花を愛でる(Stop and Smell the Flowers)」。そこに込められた想いは、めまぐるしく入れ替わる現在のファッション界で、10年間インディペンダントを貫いてきた誇りと感謝。デザイナー曰く「いつも咲いている花の美しさに目を留め、その香りを味わうように、いま目の前にあるものの美しさや奇跡を、人生そのものを楽しみ感謝する」 。
花といえば、欠かせないのが土。会場には、アーティスト兼環境問題研究家のマヤ・リンとのコラボレーションにより200トンのオーガニックの土が運び込まれ、巨大な円錐ピラミッドを制作。そしてフローラルプリントや端切れによる花の刺繍などが散りばめられた美しいルックが、会場で花開いた。
カラーパレットは優しいアースカラーで構成され、白、ベージュやブラウンをベースに、グリーン、カーキや水色がアクセントに。また、ベーシックなスポーツウエアにシルクなどのフォーマル素材や繊細なディテールを取り入れることで、相反する要素の「共存」を表現。例えば、ブルゾンなどのスポーティなアイテムに繊細なチュール、ニット素材や切りっぱなしのラッフルディテールをあわせるなど、全体的にポエティックなロマンティシズムも感じさせる。さらに、女性の体を美しくみせるカッティングや甘すぎないフェミニズムなど、フィリップ・リムが得意とする世界観も存分に発揮されていた。
フィッリップ・リムは、今回のコレクションで単にトレンドを生むという行為を超えてトラディショナルな洋服のあり方を見直し、より共感しやすい新しいラグジュアリーの価値観を提起。ラグジュアリーそのものの価値観が変わりつつある現代において、トレンドのさらに先にある価値の創造を行うことができる稀有なデザイナーであることを証明した素晴らしいコレクションだった。